季節のページ

季節ごとの植物や風景など、出会った喜びを残したいと思います。


2007年3月9日〜11日 雪の南富良野にかすかな春

昨年の7月末、家族でそろって北海道の旅をしたのはほんとに楽しかった。家内とは新婚旅行以来、一穂は初めて訪れる北海道、それぞれに感慨深かった。それからこんなにすぐ、しかも雪の北海道を再訪することになるなんて思ってもみなかった。

僕は仕事でも何度か来ているけれど、いずれも夏ばかり。一度北海道の雪景色が見たいと思っていた。飛行機が旭川空港に着陸する前から、上空から見下ろす雪景色にすでに心が弾んだ。そのとき後の席の子供連れのお母さん、きっと北海道に住んでる方で、ひと時東京の春を楽しんできたんだろうなぁ、子供に『がっかりするねぇ、また雪だぁ』そうかぁ、こっちの人にとっては雪はちっともうれしくないんだなぁ。

今回の旅は南富良野のログホテル・ラーチのスペシャルディナーと音楽と宿泊のパックにゲストとして呼ばれて実現した。声をかけてくれたのは中富良野在住のピアニスト、菅美穂さんとご主人の祥士さん。空港まで迎えに来てホテルまで送ってくださった。途中の雪景色に何度か停まっていただいて写真を撮った。
国道から金山湖のほうへ入るとやがて左側は山の斜面、右側が凍った上に雪が積もった金山湖。山の斜面には鹿が次々姿を現し、車から見ている分には逃げもせず、しっかりこちらを見つめ返していた。こんなにたくさんの野生の鹿を見たのはもちろん初めてだ。10kmほど奥のホテルまでの間、近くに遠くに鹿の群れを見ることができた。

鹿たちはかすかに出始めた草や木々の新芽、木の皮などを求めて急な斜面にも現れる。
ホテルは雪の積もった林の向こうに見えてきた。右側の三角屋根のレストランと左側に客室の棟。素敵なログハウス。

部屋に荷物を置き、すぐに演奏するレストランを見に行った。天井が高く、ふんだんに太い丸太を使っていて柔らかな音響になりそう。大きな窓からは前庭とその向こうに林が見えて開放的。テラスに置かれた野鳥の餌台にカケスが2羽、向こうの林と行ったり来たりして餌をついばんでいる。
部屋は思わず叫んでしまうほど素敵で、二階へ吹き抜けになっていた。下が広々したリビング、階段を上がった二階が屋根裏風の寝室。寝室の窓からはライトアップされた雪景色が幻想的に見えた。

ひとりでゆっくりレストランの夕食をいただいて、家にいたらありえないような早い時間にベッドに横になった。持って行ったエッセイ集を少し読んで、眠くなってきたところで灯りを消す。
翌朝は5時過ぎに目が覚めた。すでに薄明るくなってきている。と思ったらもう寝てなんかいられない。すぐテラスへ出てみる。寝巻きのまま裸足で出たから、やたら寒いのは当たり前。だけどあまりにきれいな景色なのですぐカメラを取りに入り、大急ぎで撮影する。だって刻一刻と色や明るさは変わっていくんだ。まだ灯りがはっきり見える雪の林とやや朧な半月を逃したくなかった。5時17分。

大急ぎで着替え、ホテルで借りた長靴を履いて外に出た。夕べ少し降った雪のおかげで新雪に覆われ、一層きれいな景観になっている。東の空はうっすらと朝焼けの色になっている。5時53分。
新雪を踏んでホテルの周辺を少し散策した。ホテルより少し高いところにはロッジが並んでいる。家族やグループならこちらもよさそう。

反対にホテルの駐車場のほうから坂を下りていくと小さな川があり、雪で周りをふっくらと覆われた間を透き通った水が流れていた。


山に囲まれているからなかなか太陽は姿を見せない。ようやく山の上のほうに朝陽が当たってきたが、そろそろこちらも寒さに耐えられなくなってきた。
暖かい部屋に戻って冷えた体が少し元に戻り始めた頃、ようやく太陽が顔を見せた。6時35分。

今日の予定は、7時半に朝食、10時にピアノの調律が入り菅さんもその頃にはホテルに来ることになっている。昼食のあと午後リハーサルをして夕食後8時からコンサート。

早朝から張り切りすぎて、朝の食事が済んだら眠くなってきた。ベッドに横になり一休み。予定通りに調律が入ったので見に行く。菅さんも来ている。ピアノはかなりひどく狂っている。あまり使われずに激しい温度差、湿度差にさらされているから無理もない。

早めに昼食を取り、リハーサルは3時半を予定して菅さん夫妻と少し近くをカメラ持って出てみることにした。まずは凍った金山湖でワカサギの穴釣りをしているというので見に行ってみよう。
湖には釣り師のテントが並ぶ。なかにはスノーモービルで来ている人もいる。撤収した人が使った穴が残っていた。釣魚料に関しておおらかな内容の看板が立っていた。僕が凍った湖に立ったのは子供の頃榛名湖でスケートをして以来ではなかろうか。あそこでもワカサギを釣っていたが、テントもスノーモービルもなかったなぁ。ちなみにこの日はあまりたくさんは釣れなかったらしい。

リハーサルまで時間はたっぷりあるから、車でもう少し先へ行って鹿の姿を追ってみようか。湖に沿った道を走って行くとパーキングスペースがあったので、車を停めてカメラを持って出る。あちこちに鹿の姿を容易に見つけられる。でもこちらが車から降りているので、鹿も警戒して山の上のほうから見ている。7〜8頭の群れがいたが、ボスの一声でいっせいに山の上に登って姿を消した。
鹿の姿は山ばかりではない。凍った湖には足跡がいっぱい。よく見るといた!それもかなりな群れで。見ていると一斉に駆け出した。ずっと向こうの対岸の斜面を登っていく。


1頭離れてじっとこちらを見ているのがいた。と思ったらくるりと向きを変えてぴょんぴょん跳ねて逃げていった。
ホテルに戻って一休み、3時半からリハーサルをしてその後間もなく食事。本番前はあまり食べない習慣だけど、フルコース食べてしまったなぁ。お客さんのスペシャルディナーが済むのを待って待機していると、コンサートを予定せずに食事だけで帰るお客さんが出てきた。『それチェロですか?』そう、これからコンサートなんです。『わぁ、残念!聴きたいけどだめだぁ。』これ知ってますか?『あ、知ってる!』というわけで玄関ロビーでバッハを弾いてしまった。次回はぜひ聴きに来てくださいね。

『あの、そろそろお願いします。』ホテルの係りの方が待っていた。
皆さん、こんばんは。今夜はよくおいでくださいました。

今夜のプログラム

ベートーヴェン チェロソナタ 第3番
バッハ 平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番プレリュード
リスト 愛の夢
フォーレ エレジー
サンサーンス 白鳥
ラフマニノフ ヴォカリース
グノー アヴェマリア
はじめは緊張気味だったお客様も次第にほぐれ、後半のプログラムではトークにうなずいてくださるようになった。無事コンサートを終え、着替えてロビーに行くとまだフロントにお客様がいらして、とても楽しんで聴いたとの感想をいただいた。今後この企画を継続していきたいとのホテルの意向も聞けて、第1回としてはまずまずのスタートだったかな。

ラウンジで菅さん夫妻とワインで乾杯。12時頃まで余韻を楽しんで部屋に帰る。

あんまり暖房が効くので上階の寝室は暑いくらい。少しだけ窓に隙を開けたらちょうどよくなってよく眠れた。

翌朝は起きてみたらなんとすごい降りだ。飛行機は大丈夫かな。

7時半に朝食。菅さん夫妻も夕べは泊まったので朝食は一緒にした。天気が心配なので早めに行動する。菅さんが旭川空港まで送ってくださるので安心だ。
空港に着くと雪はすっかり上がり青空も覗いた。陽が射せば暑いくらいに強い。ガラス張りの空港正面には日よけカーテンが引かれた。早く着いたから時間もたっぷり、ゆっくりお茶と食事をしてから菅さん夫妻に感謝して搭乗口へ入った。

MY FAMILY &
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