乗馬日記
夢だった乗馬…ついに現実に!富士の山荘の直ぐ近く、Paddy Fieldに入会。


2009年7月18日 競技会

去年初めて参加した八ヶ岳ホースショーは、僕にとって大きな経験となり、そのあとたくさんのことを学ぶきっかけになった。そして何より僕と相性のいいジェリーとの出会いが新しい乗馬への興味と楽しみに繋がった。

充分に調教されてきた馬たちがそのできばえを競うトレイルは、人を乗せる馬としての良し悪しを見る上でも基本。人を安全に乗せ、忠実に指示どおりの動作ができることはどの馬にも求められることだ。それは周りの状況によって左右されないということも含めて、馬にはかなり高度な要求でもある。

盲導犬がどんな状況でも動じず、自分を押さえて主人に付きそうようになるまでには、涙ぐましい訓練の日々が必要だ。しかもすべての犬が訓練によって盲導犬になれるわけではない。

ジェリーがいい馬として認めて貰えるまでに成長したかどうか、初めて問うことになる。
前日に会場に着いたジェリーはほかの馬たちと共に割り当てられた厩舎にいた。パディのスタッフが早くから忙しく準備をしているところへ僕たちも到着した。おはようございます!高橋師匠やカオリンさん、中代さんのほか参加する会員さんたちもすでに自分の乗る馬や鞍などの準備をしている。

『ジェリーはかなり落ち着きをなくしています。昨日上の馬場で様子見たんですが、今回来ている馬の中で一番落ち着きません』高橋さんが開口一番そう言った。予想はしていたが、きっとジェリーにとってはものすごく緊張する雰囲気なんだろうな。ジェリー!おいで。厩舎で干し草を食べているジェリーに声をかける。少し目がうろうろ落ち着かないようだが、それでも僕の顔を見たら甘えてきた。

『向こうの馬場で少し回して様子を見てください』こちらへ来る前にパディでも練習した調馬索と鞭を持ってジェリーを牽いていく。ジェリーはあまり積極的に走りたがらない。気持ちが高ぶって落ち着かないというよりは気持ちがそぞろで集中できない様子。
あまり長く回しても効果ないかな。もういいことにしよう。

どちらかというと早く乗りたかった。競技は9時からで、僕たちの出るトレイルノービスクラスは最初だ。少しでも乗って感じを掴んでおきたかった。
馬装をして服も着替え、パディからの参加者が一列に連なって上の競技馬場まで行く。雨が結構降っていて、馬場は泥沼状態だ。馬場に着くとそれぞれ思い思いに散ってウォーミングアップを始める。華やかなはずの馬場も泥と霧雨の中でくすんでいる。

ジェリーはいつもに比べて明らかに何かを恐れているような不安な表情だ。大丈夫、何でもないんだよ。いつもと同じようにすればいいのさ。声をかけながら蹄跡を回る。今回のパターンでは速歩が多い。駈歩は最後の方で一回だけ、並歩も最初と最後だけだ。パディではジェリーの速歩は頭を下げてとても姿勢もよかったから大丈夫と思っていた。でも今日は何をするにも首を挙げ目も耳も周りの様子を気にしてうろうろしている。
『少し置いてあるものにも慣らしてください』師匠に言われてログを越えたりブリッジを渡ったりしてみる。パターンは頭に入れてあったが、実際の景色の中でもう一度よく復習してみる。よし、大丈夫だ。

ゲートをやってみる。何か合図のたびにジェリーがびくっとするようだ。明らかに過敏になっている。
練習段階で一番苦労したのがバッククランクだった。一つ一つの動作に間を取りながらゆっくり正確に誘導する。僕にとっても難しいが、先を急ぎたがるジェリーにも小刻みにじっと待つのはうれしくない。
速歩でログを越えるのはこのところ歩幅の調節をするようになってきたから割合うまくいく。足下も自分で気にするようになっていた。でも、今日はほかのことに気を取られて足元を全然見ていない。特にこの向きのときは正面に見物客やブリティッシュをやってる隣の馬場が見えて気になるらしい。耳が完全にそちらを向いている。
一通り気になるところを試してみた。ただ、気がかりは駈歩でログを越えるところ。僕たちのクラスでは2本だけで間が3間歩なんだが、上のクラス用に間にもログが置いてある。これを練習するべきか迷った。パディでも歩数が合わなくて苦労した。ペースを落として進入するとジェリーが自分で合わせるようになって、まあまあできるようにはなっていたんだが、ここで余計なログがあるのに練習して却ってあわてるんじゃないか。

もう一つ、サイドステップも上級用にL字に置いてある。僕たちのは1本だけだ。サイドステップはジェリーは得意だからいいかな。一回だけ反対方向から試して、L字もうまく曲がれたから大丈夫だ。

そろそろ時間だな。控え馬場にほかの馬たちと出番を待つことにしよう。この間に馬場ではログなどの位置を計測し直してきちんと並べる。
12月のパディのコンペで2位になった時と同じ赤いシャツに紫のネクタイ、黒いジーンズで大舞台に臨む。ああ、ジェリーはせっかくきれいにしてシャンプーやリンスまでしてたのに泥だらけになっちゃった。初舞台なのにね。ジェリーの斑模様はとにかく目立つ。それだけに足下が泥だらけになっちゃったのは惜しいなぁ。
このクラスの参加者はパディからの4頭のみ。練習の成果が出せれば入賞の可能性もあるさ。最初にサンダーが出た。途中サイドステップのときに少しもたついた。高橋さんが『ゆっくりでいいです!』と指示を飛ばす。そのあとで『もしああなったらやり直してもいいですから落ち着かせて』と僕に耳打ちした。大丈夫、ジェリーはサイドステップは得意なんだ。

2番目に僕とジェリーが呼ばれて馬場に入った。一瞬、最初に通るブリッジと、その隣にあって最後に入るボックスが同時に目に入って、あれ?最初は何だっけ?コンマ何秒のことではあったが、あ、やっぱり僕も少し緊張してるんだな。
さあ、スタートだ。落ち着いていこう。まずはゆっくりブリッジを越える。ブリッジの上をゆっくり3歩、降りる時もログの間に1歩ずつ。
速歩にしてログを越えるのに少しぎくしゃくした。ゲートに近づいて停まるのも何となくスムーズじゃないな。呼吸を整えてゆっくりゲートの動作に入る。ときどき跳ねそうに落ち着かない様子。紐を掛けるのに寄せるのもちょっと危なかった。
速歩でログを越え、左に直角に曲がって正面を向いたところでサイドステップ。ここで思わぬことが起きた。ジェリーが何としてもサイドステップをしたがらない。右の脚で押そうとすると、触っただけで駆け出しそうになる。手綱で押さえられて駆け出せないからその場で跳ねる。何とか押し込もうと思うが横を向いてしまったりログから離れてしまったり。とうとう小さく後ろから一回りしてやりなおした。ここで失格になるわけには行かない。何としても通過しなければ。
やっとの思いでジェリーを押し込むことができた。ジェリー、どうしたんだ?忘れちゃったのかい?

まさかの大失点だった。気を取り直して速歩で次へ。
速歩で2本越えたら左回りにUターン、もう一度2本越えて右に直角に曲がると次は問題のバッククランクだ。
心配した割にはうまくできた。でもジェリーの気持ちはここにあらず。とにかく周りが気になって仕方がない。

右手前の駈歩で出てログを越えるが、1本越えたら速歩に落ちた。すかさず駈歩に戻したが手前が逆になった。すぐに直したがもう目の前に最後のボックスがあった。
ゆっくりボックスに入って3/4周して出たところでフィニッシュ。
5月の合宿、そして7月も2週間山荘で過ごし毎日練習したのに、結果はさんざんだった。70点の持ち点が48点になっていた。僕のあとの馬たちはみんなそつなくやって60点台を取った。大差で最下位。さすがにショックは隠せなかった。
だけどジェリーがどれほど不安な思いでいたかを思うと胸が痛んだ。終わって僕が正直がっかりしたこともジェリーは感じたに違いない。12月のコンペのときは終わってほっとした表情で僕の胸に鼻を埋めてきた。あのときと今日の表情の違いはどうだ。ジェリーがこんな悲しそうな顔をするなんて。悪かったな、とーちゃんは少し得意になってたんだ。でもまだまだジェリーには辛かったな。ほかの馬たちはみんな歴戦の覇者だ。今のジェリーが彼らに勝てると思う方が無茶だ。だけどいつかきっとジェリーもみんなが注目するような馬になるよ。ジェリーのいいところはとーちゃんよくわかっている。ジェリーのジェリーらしさは残したいんだ。まだジェリーにはたくさんの可能性がある。これからまた一緒にやっていこうな。
あっけなく戦いは終わった。だけど僕たちにはこれからがある。ジェリーが僕に与えてくれた幸せを今度は僕が大きくしてジェリーに返してやりたい。
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