FELIZ チャペルコンサート

2009年6月3日 山口県宇部市 風の見える丘 フェリース


山口県宇部市の郊外にすてきなスペイン風の建物が立つ丘があります。広い空、遮るもののない視界の彼方には海が見えます。すてきな南欧風の高級住宅が隣の丘に点在するほかは一面緑の草と木々が見えるばかり。

写真家のN氏がスペインへの思いを込めて作った建物は、結婚式場やレストランとして人気のスポットになっていますが、そのチャペルでのコンサートが静かに注目を集めています。過去数回行われたコンサートはいずれもバッハを中心とした無伴奏のヴァイオリンやチェロで、天井の高い石造りのチャペルならではの粘りのある残響がヨーロッパの響きを想わせます。

梅雨入りも間近になった6月始め、このチャペルコンサートのため山口へ出かけました。
前日午後新幹線で新山口へ到着、ゆっくり休息を取り、翌朝10時過ぎに迎えの車で会場の『風の見える丘フェリース』のチャペルへ。早速音を出して響きを見ます。チャペルはとても落ち着いた雰囲気で、チェロの音が気持ちよく響きます。千葉のさや堂の響きとも近く、あの残響を程良く減らした印象です。

演奏は楽器の響きに建物の響きや雰囲気をプラスしてできるもの、さらに演奏家とお客様の心が音楽を通じて触れ合うことで感動を分かつことができます。ここの響きは演奏を気分良くするのには申し分ありません。どんなお客様がいらしてくださるか、楽しみです。
開演30分前、お客様が集まり始めました。午後から降り出した雨は一向に止む気配なく、風も強まってあいにくのお天気になってしまいましたが、お客様はお馴染みの方も多いらしく、入り口で迎えるオーナーのN氏と親しげに挨拶を交わされてチャペルへ入られます。

今回用意したプログラムは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番と第4番、石黒晶の絃歌三章、それに無伴奏による小品を3曲です。私にとってはなかなかきついプログラムで、演奏が近づくに連れ緊張も高まります。

今回お世話くださったのは、普段我々のチラシなどをデザインしていただいている中村美香さんです。地元新聞社にお勤めでお忙しい中、準備段階から細かく気を配ってくださりありがたかったです。この日は仕事を休んでコンサートのために一日動き回ってくださいました。美香さんのおかげで、緊張しつつも本番を楽しみに迎えることができました。
一曲目、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番は6曲の中では一番多く演奏してきました。とても好きな曲でもあります。とかく難しく捉えがちなバッハですが、できるだけ自由に自然に感じるままを表現したいと思いました。
1曲弾き終えてほっとしたところでご挨拶。私にとっては初めてのお客様ですが、このチャペルコンサートにはお馴染みのお客様もいらっしゃるご様子。話にもじっと耳を傾けて頷いたり笑顔で応えてくださるお客様が多く、私も気持ちがほぐれていくのを感じます。

石黒晶の絃歌三章はまもなく楽譜が出版されるので、この機会に演奏し紹介したいと思いました。お客様にとって初めて聴く絃歌三章への反応はとてもよかったと思いました。
音響ばかりでなく、チャペルの雰囲気が音楽を楽しむお客様にも演奏する私にもとてもよかったと思います。ヨーロッパの教会から運んだ祭壇や長椅子などの調度品の落ち着いた色合いが、スペイン的な黄色と赤の司祭の椅子ともよく合います。
高い天井が圧迫感のない響きを生み、音楽に自然の間を与えてくれます。ヨーロッパの音楽にはこのような空間から生まれる響きが想定されていて、表現にとても重要な要素になっていると思います。

バッハの無伴奏チェロ組曲第4番はすばらしい曲ですが、この音響があってこそです。

最後に本来はピアノ伴奏が付く曲を、敢えて無伴奏で演奏しました。サンサーンスの白鳥、ラフマニノフのヴォカリース、カザルスの鳥の歌。いずれもピアノが入らない分、空間に消え入る音を最後まで味わいながら演奏できたと思います。

MY FAMILY &
PHILHARMONIEKAMMERENSEMBLE