第16回クロスクラブコンサート

2011年11月3日(木・祝)

撮影 三好英輔

秋の色合いが美しく、この時期のクロスクラブは落ち着いた静けさに包まれます。少し前までコブシの木の赤い実を食べに鳥たちが毎日やってきて大騒ぎだったそうです。『その食べかすや落とし物で掃除がたいへんだったの』とオーナー夫人の麗子さん。

今日は寒さもそれほどではなく、お天気も大丈夫。初めて今日演奏する仲間たちも初めていらしてくださるお客様も、きっとみんなここが気に入ってくれるでしょう。手入れの一つ一つに心がこもったクロスクラブは、僕にとって最も居心地のいい空間の一つです。

コンサートのあとのパーティのため前菜を用意します。僕たちの楽しみはコンサートだけで終りません。一緒にコンサートを準備し演奏した仲間たちと打ち上げをすることは大きな喜びであり、一つの達成感を共有する大切な時間です。そしてお客様にも加わっていただいて親しくお話しできる貴重な時間でもあります。親しい人同士の会話が楽しいように、親しい人同士が演奏しそれを聴く人も親しい間柄であることはとても楽しいことです。

パーティを始める時間はそろそろ冷えてくる頃でしょう。温かいシチューがおいしいと思います。今日は鶏と根菜のクリームシチューにしました。

最近気に入っているのは、クリーム系の煮込みやソースにレタスを入れること。独特のシャキシャキ感と葉物の青臭さが意外なおいしさです。

コンサートを支えてくれるスタッフも大切な仲間たちです。何よりうれしいのは、彼らもまたこの日を楽しみに集まってくれることです。

デザインをしてくれる美香さんもコンサートを支えてくれる仲間のひとりです。いつもすてきなチラシのデザインをしてくれますが、当日届くスペシャルドリンクはその日のイメージ、チラシの色とよく合うボトルやドリンクが選ばれています。



当日のリハーサルは会場の響きや雰囲気の中で自分たちの思いがどう伝わるかを最後にチェックする大切な時間。いつもと同じであることと、ここでしかないことの微妙な関係がコンサートの楽しさです。


リハーサルで全てのプログラムの最終チェックが終わると、もう開演ぎりぎりの時間になっていました。急いで軽い食事をして、着替えて本番です。
早くからいらしてくださったお客様でもう庭に会話が弾んでいます。厨房から様子を見ながら少し緊張感が高まってくるのを感じています。今日もきっと楽しいコンサートになるという期待が膨らんできます。
コンサート最初は今日唯一全員で演奏する曲、バッハのカンタータ63番からデュエット『キリスト者たちよ、この日を彫り刻みなさい』。キリスト降誕に歓呼する人々への天の呼びかけを歌います。バッハのカンタータは数多く残されており、その中から我々のような小さな編成でも演奏を楽しむことのできる作品がいろいろ見つかります。

続くバッハのカンタータ20番はアルトとテノールのデュエット。『おお永遠、雷の言葉よ』この世の宝を求め、罪を犯すことを諫める歌。
バッハのガンバソナタは3曲いずれも楽しみなレパートリーです。夏以来何度か弾いてきた1番に替えて今日は2番を弾きます。明るく生き生きした楽想が魅力です。

テノールの石川洋人さんの曲はテレマンのカンタータから『悪い評判がもたらすもの』。信仰への厳しい姿勢を説きます。リコーダー奏者にとって最も大切な作曲家のひとりであるテレマンの作品で、歌とリコーダーの築き上げる音楽は礼拝のための音楽という本来の目的以上に、バロック黄金期の偉大な名作に数えられます。
この夏の協演ですっかり親しくなったリコーダー。小さなものから大きなものまで8種類。今回もテレマンとアンナ・ボンでは違う楽器を演奏しています。音の高さだけでなく、音色も様々です。テレマンのソナタはアルトリコーダー。明日香さんとのアンサンブルもこの夏以来の楽しみになりました。

休憩後、最初は青木洋也さん。洋也さんが選んだ曲は17世紀の作曲者不詳の作品。サルヴェ・レジナはいろいろな作曲家が作品にしている古い歌詞で、聖母マリアにすがり讃える歌。今日のこの作品はヴィオラ・ダ・ガンバとアルトの対話の形で書かれています。
ヴィヴァルディのソナタ1番は力強くおおらかな曲です。ピアノとのアンサンブルとスピネットとのアンサンブルではどちらからもそれぞれ違ったインスピレーションが与えられ、自然にこちらの語り口も変化していきます。
アンナ・ボンは18世紀イタリア、ヴェネツィアの女流作曲家。多くの作品は残していませんが、このソナタ第1番はすてきな曲でした。たくさんの装飾が華やかで、ソプラノリコーダーの明るい音色が生きています。

プログラム最後はバッハのカンタータ第28番から『神を讃えよ!今や一年は終わり』。一年の終わりに神の恵みに感謝し、また神が新たな年を与えてくださることへの期待と先んじての感謝の歌。
コンサートが無事に終わりました。お客様が今日のプログラムを大いに楽しんでくださったこと、とてもうれしく思いました。
さてそれでは今日も庭で打ち上げパーティをしましょう。ささやかですが、手作りの食べ物とワインをご用意しました。おしゃべりの時間をご一緒に楽しみましょう。

前菜が並んだところで乾杯!
ハムと野菜の盛り合わせサラダと、バケットに塗るとおいしいディップが2種類。ポットには温かい鶏と茸のクリームシチュー。デザートにはスウィートポテト。

演奏と食事の準備を一緒にするのはなかなかたいへんです。でも演奏の練習も食事の準備も楽しみのうち、そして皆さんと一緒に過ごすこのささやかな時間は大きな喜びです。

すっかり暗くなった庭に明かりが灯り、楽しい会話が続いています。少し寒くなってきました。厨房から運ばれる温かいシチューの湯気と香りに誘われて、今日のメイン料理はなかなか好評のようです。

おかげさまで今年も楽しいクロスクラブになりました。来年はどんなコンサートにしましょうか。今から楽しみです。

MY FAMILY &
PHILHARMONIEKAMMERENSEMBLE
クロスクラブ