フィルハーモニーカンマーアンサンブル結成20周年記念コンサート
第21回 フィルハーモニーカンマーアンサンブルコンサート in オペラシティ2015

                                                        2015年3月18日(水) 7時開演 東京オペラシティ リサイタルホール


1995年に仲間たちと活動を始めたフィルハーモニーカンマーアンサンブルが今年結成20周年を迎えました。所属していた東京フィルハーモニー交響楽団のメンバーやエキストラで来てくれていた演奏家たちでアンサンブル好きが集まりました。富士の山荘に泊りがけで行き、持ち寄った楽譜を片っ端から初見で弾いては飲んだり食べたりの楽しい時間を過ごしました。ちょうど私の通う教会にその頃一時預かる形ではありましたがパイプオルガンが入り、せっかくならこれを使ったコンサートをしたいと思いました。この年の3月に起きた阪神淡路大震災の復興支援のためのチャリティコンサートを 教会で開くことにして、フィルハーモニーカンマーアンサンブルが演奏することになりました。以来毎年教会の創立記念日にチャリティコンサートを開くようになり、また近くの高齢者施設や学校、重度障害者施設などへも演奏の場を広げました。このようなボランティア活動は多くの貴重な出会いの場となり、コンサートホールとは違う演奏の機会が多々あるということを知りました。10年を経て我々の音楽的な形が見えてきたころ、オペラシティリサイタルホールでの定期公演を始めました。演奏する我々とお客さまが楽しい時間と空間を共有するコンサートをこのホールでも実現しようと思いました。いろいろな曲目を気の合う仲間たちと演奏してきました。何より我々自身が楽しむこと、それがお客さまに楽しんでいただく一番の方法だと思います。この気持ちを毎回実感しつつ今日20周年記念コンサートを迎える幸せをかみしめています。
   1月に東京フィルハーモニー交響楽団を定年退職しました。でも仲間たちの多くはまだ現役の東京フィル団員です。日々厳しい演奏の現場に立っています。私一人がのんきにしていたら彼らに付いていくことができなくなってしまいます。まずはこの日のコンサートで自分として最大限の演奏をしなけれと思います。

リハーサルはモーツァルトのクラリネット五重奏曲から始めます。もう何度となく演奏してきました。私の大切な仲間、杉山くんのこの曲に対する思い入れは強く、彼との共演はいつも楽しみです。お互いを出し合うことが許される仲間たちと今日はどんな対話が生まれてくるでしょう。
 バッハのカンタータはフィルハーモニーカンマーアンサンブルの大切なレパートリーです。これまでに演奏したものはまだ数曲ですが、いずれも我々独自の小さな編成で可能な表現に挑んできました。ソロ、アンサンブルともに素晴らしい歌を聞かせてくれる仲間たちがあってこそできることです。
   
   最も信頼するヴァイオリンの宮川くんはヴィヴァルディに独特の味わいある演奏を聴かせてくれます。自由に膨らむ発想、ほとばしる表現には魅力があります。ヴィヴァルディの音楽がとても人間味のある魅力的な世界を映しだします。昨年聴かせてくれた四季に続いて今日はどんなヴィヴァルディが登場するか楽しみです。
 アンコールにアメージンググレイスを用意しました。大好きなラターのアレンジをもとに、今日の編成をフルに使ったオーケストレーションをしました。前夜作りながらイメージしていた以上に素晴らしい響きが生まれてきます。アレンジャーとしてみんなに必要な説明をして、あとは本番のときみんなの感性が響き合うことに楽しみをとっておきます。  
   今回急に出演してくれることになった澤江衣里さん。2月に志木の教会で行われたコシケンコンサートで共演し、素敵な声に惹かれました。バッハの最初に美苗さんとふたりで素晴らしいコラールを聴かせてくれます。アンコールの出だしは彼女のソロにしました。
念願だったフィルハーモニーカンマーアンサンブルとのコンチェルトが今日初めて実現します。こんなに室内楽のように親密で信頼できるオーケストラをバックにハイドンの名曲、チェロ協奏曲ニ長調を演奏できる幸せはほかにありません。本番で自分の想いをどれだけ音にすることができるか、全力で臨みます。 
   
 18:30、開場しました。早くからたくさんのお客様が入場してくださり席がどんどん埋まっていきます。ステージではバッハで使うオルガンとヴィヴァルディで使うスピネットの調律をしています。できるだけ会場の空気に慣れさせてから直前に最終的な調整と調律をします。それだけに時間との勝負でもあり緊張します。スピネットの調律をしていたら最後の最後になって弦が1本切れました。時間はあと15分を切っています。急いで替えの弦を用意しますが、端をねじって輪にする作業は一人ではなかなか難しいのでスタッフの手を借ります。でも慣れないと弦をつかんでいる力加減がわからず、しっかり持ちすぎて弦がよじれ切れやすくなります。新しい弦を張る時、音程を次第にあげていくのが最も緊張します。あと半音というところまで上げた時、また切れてしまいました。もう一度やり直し。今度はスタッフにも注意してもらって端を処理し、息子の手も借りてやっと張ることができました。時間はちょうど開演時間になったところです。  
 
 急いで楽屋に駆け戻り、燕尾服の上着を着てステージに出ます。さすがに息が弾んでいましたが、何事もなかったかのように…

ゲネプロの時にみんなから贈られた還暦祝いの赤い蝶ネクタイと腹帯を着けて出ました。
短いトークのあと袖に戻ると、1曲目のヴィヴァルディを演奏するメンバーが楽しそうに出を待っています。まだ息が整わないけれどみんなを待たすことはできません。さぁ、行こう。 
 
   明るいニ長調の響きが会場の空気をいっぺんに楽しい雰囲気にします。宮川くんの澄んだ音色に引き寄せられるように、我々のアンサンブルがひとつに集まります。弦楽器にとって魅力ある曲がたくさんあるヴィヴァルディ、これからも弾いていきたいと思っています。
   
 バッハのカンタータ第139番は2013年10月にフィルハーモニーカンマーアンサンブルが初めて関西公演を行ったとき宝塚のベガ・ホールで演奏し、同じ演目を東京の定期公演でも演奏しました。ソプラノの澤江さんには初めて加わってもらいましたが、ほかはすべてあの時と同じメンバーです。弦楽器とオルガンにオーボエダモーレが加わった豊かな響きに5人の歌声がよく調和します。  
   曲ごとの転換が多いので曲間はトークでつなぎます。休憩時間だけがやっと一息つけます。ロビーにはこれまでの定期公演、第1回から第20回までのすべてのチラシを並べて展示しました。初回以来ずっと素敵なデザインをしてくださっている中村美香さんも、我々フィルハーモニーカンマーアンサンブルの大切な仲間の一人です。
後半はモーツァルトの晩年の名曲、クラリネット五重奏曲で始まります。何度でも演奏したい、そのたびに何か素晴らしい体験の生まれる曲です。今夜の第2楽章、これほどまでみんなが息をひそめてクラリネットのピアニッシモの中へ吸い込まれたことがあったでしょうか?まさに奇跡のような瞬間でした。 
   
   杉山くんの素晴らしい最弱音はすべての人の心の奥まで届きます。演奏を終えて戻った時、ステージマネージャー宮本くんの笑顔がうれしかったです。
 さあ、いよいよハイドンのコンチェルトの時が来ました。昨年6月に御殿場の市民オーケストラ、Mt.Fuji交響楽団と共演する機会をいただきました。あらためてこの曲の素晴らしさを認識しました。今夜のコンサートのプログラムとして真っ先に思いついた曲です。どうしてもフィルハーモニーカンマーアンサンブルの仲間たちと弾きたいと思いました。たくさんの感謝を音楽に籠めて演奏したいと思います。  
   
 演奏を終えてとても幸せな気分でした。何という素晴らしい仲間たちでしょうか。音楽が結び合わせる関係はとても暖かい。みんなが同じ音楽に向かって真剣に取り組んでこそ、貴重な一滴のような幸せが得られます。そこには思いやりや純粋な心、優しさや愛情、そして自分や仲間に対する信頼と厳しさなどの人として大切なものがすべて求められます。  
   とても充実した気持ちでコンサートを弾きとおすことができました。最後にアメージンググレイスを演奏するのはなんと素晴らしいのでしょうか。22名全員がひとつになる演奏です。
 無事にフィルハーモニーカンマーアンサンブルの20周年記念コンサートを終えることができました。長きにわたっていつも聴いてくださったお客さまのおかげで続けてくることができました。こんなに素晴らしい仲間たちとのアンサンブルができる幸せを実感した今日という日を忘れることはないでしょう。これからもずっと続けて行かれるように努力したいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。  
 
MY FAMILY &
PHILHARMONIEKAMMERENSEMBLE