さや堂での録音


2005年10月14日 石黒晶作曲絃歌三章テスト録音 チェロ;黒川正三 録音;今井啓二(メディアチャパ) 立ち会い/作曲者;石黒晶氏

2005年11月17日 石黒晶作曲絃歌三章本録音 チェロ;黒川正三 録音;今井啓二(メディアチャパ) 立ち会い/作曲者;石黒晶氏 金田式マイク制作者;毛利忠晴氏 試聴

絃歌三章の録音を終えて録った録音を何度も聴き返しています。録音というものはあとに残るものという点で生の演奏とは基本的に価値が違います。生演奏ではほとんど問題にならないような小さなミスも、録音では何度も聴くうちに一度気がつくとそれ以後何度聴いても気になります。我々の録音では冷静に聴いて傷を指摘する録音ディレクターがいないので、演奏する私と(絃歌三章では作曲者の石黒君)、録音の技術的立場からメディアチャパの今井君だけで全て判断しなければなりません。“生演奏にできるだけ近いものを録る”という基本的な考えは今井君と私で一致しています。演奏はあくまで演奏家によるものであり、録音技師は忠実に録るのみで絶対に修正行為(機械的なエコーやレヴェル調整、まして部分的なつぎはぎなど)はいっさいしないということです。録音を聴き返しながらいかにこれがたいへんなことかを感じています。しかしその価値はあると思います。さや堂との出会い、絃歌三章との出会い、そして今井君という協力者との出会いが私に挑戦する勇気と意欲を与えてくれました。私はこれからもできる限り続けたいと思います。(2005年12月5日)


2005年12月2日  バッハ作曲無伴奏チェロ組曲第4番録音 チェロ;黒川正三 録音;今井啓二(メディアチャパ)

今回のバッハの組曲第4番の試聴版CDを聴いています。さや堂の響きによってフレージングやアーティキュレーションが効果的に表現できました。呼吸や間が残響のおかげで自然に取れたということだと思います。残響によって和声がよく聞こえ、また反対に残響によって濁る音もあります。協和と不協和の響きが彩りになった思います。スタジオ録音に比べて空間の広さを感じさせる音響が気に入っています。(2005年12月10日)

2006年12月6日 13日 コダイ 無伴奏チェロソナタ録音 チェロ;黒川正三 録音;今井啓二(メディアチャパ)

やはり難曲です。そう簡単に録れるものではないと痛感しています。二日にわたり挑んだ録音で手ごたえは得られたと思いますが、まだまだ何度も弾き込む必要があります。技術的な完成度以上に曲に対するイメージはもっと豊かに持たなければなりません。2007年5月20日のクロスクラブで演奏するまでに繰り返し考え、練習を重ねる中で、また機会を作って録音したいと思います。2006年11月3日にパウロ音楽サロンで第1楽章、2007年1月21日に市川芳澤ガーデンギャラリーで第3楽章を演奏しました。部分的ではあっても演奏の機会を得ることで深まっていくものです。コダイの録音に自分自身が求めるものが高くなるにつれ、絃歌三章、バッハについても再度録ってみたい気になってきました。ほんとに完成と言い切れるものはどこまで行ってもありません。(2007年1月28日)

2009年4月3日 石黒晶作曲絃歌三章出版に際し付随するCD用の録音 チェロ;黒川正三 録音;今井啓二(メディアチャパ) 立ち会い/作曲者;石黒晶氏

さや堂での録音はかなり間があいてしまいましたが、いつかまた機会を作ろうと思っていました。この間にここでの演奏は東京フィルの室内楽コンサートで一度ありました。特異な響きに対して今はとまどいはなく、むしろこれを生かした演奏に対して興味が湧いています。絃歌三章については2007年のクロスクラブ以来でしたが、ちょうど今年の6月3日に山口県宇部市で無伴奏のコンサートの機会をいただき、そこでの曲目に加えることにしました。さらに作曲者石黒くんからいよいよ楽譜を出版することにした由、ついては校訂を頼みたいとのうれしい依頼をいただきました。じっくり見直すのにこんないい機会はないし、しかもCD付きの出版にするとのこと。彼との再々に渡るやりとりで、前回より遙かにはっきりしたイメージを持てました。校訂によって新たに見えたことができた以上、録音は新たに録らなければいけないと思い、急遽さや堂での録音に臨んだのです。結果はやはり前回とはかなり違うものになったと思います。しかしあくまで演奏は一回ごと違うもの、今の時点の記録であることはいうまでもありませんし、曲は今後私も含め演奏者が演奏するごとに違っていくと思います。あとひと月を切った宇部でのコンサートに向けて、絃歌三章はさらに追求していきたいと思っています。(2009年5月4日)


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