Karmann Ghia Diary
時と場所が変われば、つまり背景が変わればカルマンの表情も変わる。

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悲劇、怒り、反省、復活 2004/09/17-22

悲劇は突然やってきた。あの瞬間の衝撃が鮮明にぼくの頭に刻み込まれた。そしてスローモーションの映像を見るようにゆっくりと頭の中で再現される。何度も繰り返して、、、なぜあのようなことが起きたのか?それは避けられないことだったのか?
ダメージは右のフェンダー部。大きくへこみ、塗装が剥げ落ちた。弧を描いて無残に入ったひび割れ。衝撃の激しさを物語る。

しかし、ダメージがこの部分であったのはむしろ不幸中の幸いであった。もしぼくのブレーキがほんの100分の何秒か遅かったらタイヤが被害を受けたし、もっと遅かったらドアをやられたかも知れない。あるいは逆ならカルマンの愛らしい顔に目を背けたくなるような傷を負ったかも知れなかった。

相手にとってはぼくの大切なカルマンのフェンダーがクッションになった。転びもせず、怪我もしなかった。しかし相手にいくら過失があったにせよ、怪我をさせたらやはりこちらも気分が悪い。とにかく怪我がなかったのは幸いだった。
ぼくは9月17日の昼過ぎ、いつもなら電車で行くサントリーホールに意気揚揚とカルマンで出かけた。久しぶりに駐車場の権利をもらったから、ちょうど磨いてきれいになったカルマンをみんなに見せびらかしてやろうと得意な気持ちだった。サントリーホールの駐車場なら仲間が楽屋口にはいるときに必ず目にするはずだ。一番目立つところに停めてやろう、、、

目黒通りの都立大駅を過ぎ碑文谷陸橋の手前で左車線の左折車がつっかえて真中の車線が進まなかった。右折車線にはトラックがいた。ようやく流れ出し前の車が次々に走り去った。ぼくのカルマンは左ハンドルだから、右折レーンのトラックを気にして少し出遅れた。慎重に通り抜け、信号が青なのを確認して交差点に加速しつつ入ったとき対抗車線をバイクが走ってくるのが見えた。直感的に危ないと思った。バイクは直進レーンから斜めに右折車線を横断するようにやってきた。加速しながらその進路はまっすぐにぼくのカルマンの進路と交差する。しかもバイクのライダーは全く前を見ていない。首が完全に横向きなのだ!とっさにブレーキを踏んだ。タイヤをかばって普段は絶対にやらない急ブレーキにカルマンが悲鳴をあげた。急ブレーキの音に初めて前を見たライダーは果たしてブレーキをかけただろうか。カルマンが必死で止まったところへまっすぐに突っ込んできた。いやな音がした。否定しようもなくカルマンがダメージを受けた音だった。

信号が変わる前に交差点の真中で止まっているカルマンをどかさなければ。エンストしているカルマンのエンジンをかけ、急いで交差点の先の角に移動した。すぐに降りて傷を見た。痛々しい傷が目に入った。なんてこった。ところで相手のライダーは?あたりを見回したがそれらしい姿が見えない。そんな馬鹿な!

交差点のすぐ脇に碑文谷警察署がある。音を聞きつけたか、警察官が一人様子を見ている。すぐに合図して事故があった事を知らせた。簡単に状況を説明すると無線でパトカーを呼んだ。相手が逃げたことがわかり、またこちらが急いでいる状況も理解してくれて、大急ぎで事故処理を済ませてくれた。

気を静めてサントリーホールへ向かった。せっかくみんなに自慢しようと思ったのにそれどころではなくなった。目立たないように傷の部分を奥にして隅の区画に停めた。

保険屋と車屋に連絡し、事故の状況を説明した。悲しいかな車両保険がないため当て逃げに対する保証はなし、自費で直すしかない。腹が立つ。事故はある程度仕方ない。でも過失があるならそれを認め保証はする義務があるだろう。逃げるのはとんでもない。と言っても逃げた相手に通じるわけでもなし、一刻も早くカルマンを元の姿に戻してやりたかった。

翌日仕事に出ているうちにカルマンは修理工場に入った。ちょうど連休にかかったが、意外に早く22日にはきれいに元通りになって戻ってきた。うれしかった。

カルマンに乗り始めた最初に思ったことは、周りを見るのが見づらいなということだった。ミラーは小さいし、後ろは幌があってすぐ後ろの低いところは見えない。幌が閉まっていたらもうこれはかなりいけない。斜め後ろの視界がほとんどないから進路変更はよほど慎重にしなければ危ない。夜には灯りも暗いし、ミラーは写っている光からはどんな車がどの車線でどのくらいの距離かがわかりにくい。何しろ普段が大きなワゴン車に乗っているから、それに比べるとほとんど半分目隠しされたようだ。

そこへ今度の事故で思った。自分だけじゃない、相手からもカルマンは見づらいんだ。背が低いしブレーキランプは小さくて暗い。ウィンカーも兼用の赤一色だ。おそらく相手のバイクはまず直進のカルマンの姿が見えなかったんだろう。事故のあったところは交差点を頂点に両方向上りだ。ある程度近くまで行かないと背の低い車は相手から見えにくい。もちろんこちらからも見えにくいわけだ。

今の安全基準からしたらずいぶん足りてないのかもしれないと思う。だからこそ安全には最善の注意を払って乗るべきなんだ。車を大切に思う気持ちがそうさせる。安全は車の性能やデザインからだけ守れるものではない。ハンドルを握るすべての人が常に気をつけていてこそ守れるんだ。
悪かったな、痛い思いさせちゃって。

23日はオケの練習がキャンセルになって思いがけず休みになった。直したところのパテを乾かすためにも走ったほうがいい。早速義弟に連絡した。お互い休日だから今日は乗ろうじゃないかということになった。

早起きをして義弟のうちまで慎重な運転で行った。今日はきれいに直ったカルマンを思う存分撮影しよう。秋の景色の中で。

(つづく)