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7月20〜23日 伝統の奥穂登山

夏休みに入った7月19日、この日から寮生は出寮日であり長い夏休みを久しぶりに家族のもとへ帰って過ごすことになる。しかし、1年生の寮生だけは上級生が出寮したあとのガランとした寮にまだ残っていた。明日の早朝、北アルプス奥穂高岳登山に出発するからだ。伝統の奥穂登山、今年は6名の1年寮生に3名の先生と日本山岳ガイド協会認定の山岳ガイドの方がついて万全の安全対策と下準備をして出かけることになった。

奥穂といえば富士山、北岳(南アルプス)に次ぐ日本第3の山、3190mはいい加減な気持ちで登れる高さではない。体力、気力ともしっかりしていなければ危険だし、仲間に迷惑をかけることにもなる。学校では6月から登山に関する心構えを含む準備と訓練を開始した。

6/23 登山ゼミ
登山とは何か?伝統行事である北アルプス登山のこれまでの経緯について説明。どんなコースなのか。どれくらい困難なのか。登山の意義は何か。
6/24 パウロ裏山
登山靴を履いてみる。登山靴で歩いてみる。登山のペースとはどんなものか。足首を柔らかく使うこと。斜面での膝の使い方とは。山での水分補給。
6/25 お堂の裏山
7/1 パウロ裏山
7/2 八王子城趾
実際に歩きながら登山靴に慣れ、水分、塩分、糖分補給や体調管理、ペース配分を学ぶ。
7/7 パウロ裏山
雨具の装着、悪天候下での実践、高所障害について学ぶ。
7/9 陣馬山登山
これまで学んだことを総合的に実践。他の登山者に対するマナーも。
7/13 登山ミーティング
隊と班の組織。この登山によって、普段から寮でともに暮らす仲間同士がさらに深く理解する機会となるよう。
7/14 食事訓練
生命維持に欠かせない山での食事。また自然を守るための後かたづけ、ゴミの持ち帰りなど。
行程

入学以来、初めての寮生活、授業、部活、小テスト、中間試験、模試、英検、数検、漢検など、毎日が充実し全力で駆け抜けた3ヶ月半だった。厳しかったとも思うが、いつも一穂からの便りは生き生きと楽しそうだった。二度の出寮があったが、しばらくぶりで会うとその度にたくましくなっていてうれしかった。夏休みの最初、4日間の北アルプス登山は一穂にとっては初めての本格的登山となる。久しぶりに私と家内の間に山の話題が花咲いた。かつて北岳や八ヶ岳に二人で登ったが、まだ一穂の生まれる前のこと。一穂が生まれてからは小さな一穂を連れて箱根の金時山や富士山に登った。最近では安達太良山に登ったのが一穂中2の時。山の体験から得るものは他では得難い貴重なものだ。伝統の奥穂登山が一穂の心に新しい興味の灯をともしてくれることを期待したい。

一穂が初めて自分で作ったページ、見てください。一穂の奥穂登山写真館

引率の中で紅一点のT先生には、出発前の準備からたいへんきめ細かくお世話いただいたけれども、すばらしい体験を終えて下山した生徒たちにたくさんの写真と詳しい登山記録をくださった。生徒一人一人と接する際のその熱心さは作ってくださった記録の文章からも読みとれるけれど、担当の“現代社会”でも一穂のレポートに余白だけでは足りずさらにもう一枚のレポート用紙にびっしりと評を書いてくださったことからもわかる。

15ページにわたる詳しい登山記録には、芥川龍之介の“河童”より上高地の河童橋のくだりや、深田久弥の“日本百名山”の“55穂高岳”が引用され、歴史や文学との絡みからも貴重な体験がより鮮明に記憶される。

登山記録は登山前夜の最終ゼミから出発の朝、あずさ5号での移動、バス、河童橋、徳沢園、キャンプの夕食、そしていよいよ登山へと続く。

朝5時起床、朝食、出発準備、ガイドのIさんからの注意事項を聞いて出発。横尾大橋を渡り梓川の川音が遠ざかって山道に入って行くに連れ、みんなも登山に集中してくる。心拍数が上がり、鼻歌がやみ一同の緊張感が高まってくる。グループ登山における最も大切なことの一つは、みんなが助け合うこと。体力のあるものだけが我先に頂上を目指すのではない。全員が力を合わせて一人の落伍者も出さずに登り切ること、そして無事に帰ってくること。そのために登山隊のメンバー配列が重要な影響を及ぼす。Iさんの細かい観察と判断によって最良の配列が組まれた。

次第に急な登りとなり、それが果てしなく続く。グループでは個人のペースと違うので時には辛くもあり、しかしまたみんなで一緒だから頑張れる分もある。すばらしい大自然の魅力もまたエネルギーとなったに違いない。苦しい登りを経てたどり着いた涸沢の雪渓の白い世界にみんなの表情が明るくなる。そしてやっとのことでヒュッテに着く。食事と休息。ほんとに必要としているものを得るよろこびを感じたことだろう。山小屋の夜、満天の星を見て明日への眠りにつく。

いよいよ奥穂頂上へ向けてのアタックが開始される。揃ってパウロ伝統のエンジのシャツを着て登る生徒たちにより一層の一体感が見える。カールの長い道から険しいザイテングラートの岩に取り付く。鎖につかまり、梯子に助けられながら最後の危険な登りを制してついに全員が頂上に立つ。メンバーのそれぞれが大きな達成感と感動の中にいた。若い彼らにとって自分の力で、そして仲間と協力し合って頂上に立ったという達成感、その感動は生涯忘れないだろう。

苦労して登ってきた道を注意深く下る。登山の半分は下山。山で多くのことを得て今一まわりたくましくなったメンバーが日常へ向かって帰って行く。最後の晩、徳沢園のテントの中でシュラフにくるまってハードだった最終日の疲れをいやす。

初めて雨に見舞われ雨具を着用しての帰路。その雨もじきにやんで元気な笑顔で一行は夕方学校に戻ってきた。荷物を片づけ、ゴミの処理をする。シュラフと雨具を干し団体装備品も返却して登山は終了した。

“登山は終了した。けれども彼らの中には山のにおい、水の音、風のささやきが残っているだろう。ときには、そんな山のありようが生き生きと蘇ってくることがあるかもしれない。そして、困難の先に得たものはそれぞれの胸の中に今後も生き続けるだろう。登山の日々は、生徒諸君の人生の中で確かな輝きを放つであろう。そう信じている。”(T先生の登山記録結びの言葉)
T先生撮影の写真から
全員が頂上へ!
下山途中、雪渓にて
このページを作るにあたってT先生の登山記録と写真をもう一度じっくり見ました。一穂たちのすばらしい体験を支え一生の思い出としてくださったことに心から感謝したいと思います。

学校に戻った日、食事をし4日ぶりに風呂に入った寮生は寮に泊まって翌日から夏休みの出寮となった。翌日が迎えに行ってやれない我々はこの日遅く一穂を迎えに行った。引率してくださった舎監のK先生と寮生で今回の隊長K君ほか仲間たちが一穂の荷物を持って見送りに来てくれた。みんな疲れも見せず、安堵と満足の表情をいっぱいに浮かべていたのが印象的だった。みんな、おつかれさま!ありがとう!!




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